マイスター大学堂:ブログ

眼鏡ではなくビール工場見学


 気がつけば二月も残す所あと十日ほど、なんといつの間に!という感じです。まだまだ寒いですが、今週の中頃はちょっと暖かくなるようですね。ああ春が待ち遠しいですねぇ。

 さて、本日は眼鏡とは無関係な工場見学のお話です。

 

 某所で知人達と喫茶店に入った。私が口の卑しい事を知る知人達はしきりと「さ、遠慮なさらず」とケーキを食べるよう薦めてくれるが、珍しくその時は甘いケーキではなく、メニューにあったクリームソーダやらミルクフラッペなどの文字に心を奪われていた。
 祖母がいつも散歩する道沿いに喫茶店があり、たまに散歩に付いていくと、そこでクリームソーダ、フラッペ、ホットケーキなどを食べさせてくれた。ソーダが喉を通る刺激にバターと溶け合ったシロップの旨さ、色褪せた別珍張りのイス、ディプレイのコーヒーミルなどが飾られたこと。そして冷房の匂いと漂っていたコーヒーの匂い。今はそこから遠くへ来てしまったと思った瞬間にピカッと祖母の顔面が現れた。ピエール・アンリそっくりだった。

 そろそろ喫茶店を出ないといけない時間がきた。我々はビール工場を見学するために早起きして集まったのである。

 工場内を大勢の見学者と一緒になって歩きながら、ガイドの人から近代的なビール作りについて学んでいく。機械が黙々と仕事をこなしていく工場は、労働歌ではなくテクノミュージックが鳴り響くようなクリーンな空間だ。人の姿はあまり見えないけど、もしかしたら物陰に隠れて見学者をやり過ごしていたのかもしれない。
「このように、パンと手を叩くとビールが一ケースが出来上がります」とガイドの人が言う。想像を超える驚くべきスピードである。どうりで安く美味しいビールが飲める訳だと納得する。やがて窓から林立する銀色のタンクが見えるで立ち止まりガイドの人は立ち止まりタンクの一つを指差した。
「あそこに入っているビールを一日一缶350mlづつ飲むとして、全部を飲み干すまでにどのくらいかかると思いますか?」と我々に問うて、しばらく後に「ざっと四千年です」と教えてくれた。
 無人の荒野でビールを毎日350mlづつ飲む自分を想像する。ビール券を一枚入れるとジョッキにビールが注がれる。一日一回、四千年間それだけを楽しみに独りで生きるのだ。

 

 最後に世界のビールラベルを眺めると見学は終わり。真面目に学んだご褒美として、これから出来立てのビールを一人三杯まで飲めるのである。寡黙だった我々見学者の中をさっと喜びの波が広がる。時は来た!とみんなビールサーバーの前に行儀よく並びビールを受け取る。
 私は一杯目をチビチビ飲む。その間に一杯目を飲み干した知人達は次のビールを受け取りに行った。昼過ぎのポカンとした時間に、特に喋るでもなく、気心の知れた人とビールを飲むのは楽しい。しかし生きるために怠ける事が出来ない荒野で、沈んでいく太陽を眺めながら一人ぼっちで飲むビールというのもちょっと憧れる。そんなことをアルコールで次第に緩んでいく雰囲気の中でぼんやり考えておりました。

 

クリタケ

関連記事: